5/2(木) 叡王戦 第3局は、伊藤匠七段が勝って 2-1 とし、叡王 奪取に王手をかけました。藤井叡王がカド番に追い込まれたのは、22回目のタイトル戦にして、初めてのことです。
感想戦や局後インタビュー含めて、分析してみましょう。
伊藤七段が見つけた90手△76銀
図は89手▲82角成の局面、先手の藤井叡王が75%とリード。
残り時間も、藤井叡王が13分、伊藤七段が4分です。
この局面、後手は△66銀と取りたくなります。藤井叡王も、そう読んでいたようです。
しかし、次の90手のAIの読みは、
・△76銀 75%:先手優勢だが後手にもチャンス
・△66銀 87%:先手勝ち筋
・△68歩成 87%:先手勝ち筋
後手にチャンスが残るのは76銀だけです。
この日、冴えていた伊藤七段は、この△76銀をしっかり見つけていました。
藤井叡王は、この△76銀を予想しておらず、ここで残り13分すべて使って最善手▲61飛を打ちます。最善手は打ったたものの、ここで集中力を消耗してしまったかもしれません。
92手は △41香と進みます。
藤井叡王が見逃した▲79桂
そして問題の93手、ここでのAIの読みは、
・▲79桂 75%:先手玉は詰み難く
・▲87銀 29%:先手玉は詰み易く
・▲87歩 19%:先手玉は詰み易く
すなわち、▲79桂以外は、すべて大逆転で後手リードです。
この日、冴えわたっていた伊藤七段には、これが読めていたようです。
しかし90手で集中力を消耗した藤井叡王は、1分将棋では読めなかったようです。
結局、藤井叡王は93手▲87銀と打ち、後手優勢の大逆転となりました。
94手は△68歩成、
95手は▲76銀と進みます。
伊藤七段が見つけた96手△76同馬
次の96手、後手は△78とで金を取って王手をかけたくなります。
しかし、次の96手のAIの読みは、
・△76同馬 28%:先手玉は詰み易く
・△78と 63%:先手玉は詰み難く
・△97銀 87%:先手玉は詰み難く
すなわち、△76同馬以外は、すべて大逆転で先手リードです。
この日、冴えわたって伊藤七段は、この△76同馬をしっかり見つけました。
伊藤七段は、この後も正確に指し続けて146手で勝ちました。
終盤力の伊藤七段
藤井叡王が圧倒的な強さを誇ってきたのは、驚異的な終盤力があったからです。
しかし、叡王戦 第2局・第3局からは、伊藤七段は藤井叡王と十分戦える終盤力を身に着けたように見えます。
伊藤七段が、藤井叡王にふさわしいライバルとなる日は、すぐそこまで来ているのでしょうか。
11勝 | 藤井叡王 伊藤七段 | 2勝 |
先● | 24.5 叡王戦3 角換わり腰掛銀 146手 | 後〇 |
後● | 24.4 叡王戦2 角換わり△33金 87手 | 先〇 |
先〇 | 24.4 叡王戦1 角換わり腰掛銀 107手 | 後● |
後〇 | 24.3 棋王戦4 力戦 (相掛かり) 114手 | 先● |
先〇 | 24.3 棋王戦3 角換わり腰掛銀 105手 | 後● |
後〇 | 24.2 棋王戦2 角換わり腰掛銀 94手 | 先● |
先ー | 24.2 棋王戦1 角換わり腰掛銀 持 129手 | 後ー |
先〇 | 24.2 NHK杯 4R 角換わり腰掛銀 93手 | 後● |
先〇 | 23.11 竜王戦4 角換わり腰掛銀 129手 | 後● |
後〇 | 23.10 竜王戦3 相掛かり 96手 | 先● |
先〇 | 23.10 竜王戦2 角換わり腰掛銀 107手 | 後● |
後〇 | 23.10 竜王戦1 相掛かり 82手 | 先● |
先〇 | 22.11 棋王戦 角換わり腰掛銀 135手 | 後● |
後〇 | 22.9 NHK杯 2R 相掛かり 116手 | 先● |