10/6(金)から、藤井聡太竜王に伊藤匠七段が挑戦する、竜王戦 第1局が始まります。七番勝負を展望してみましょう。
竜王戦 七番勝負 2023 | |||||
4 | 藤井聡太 竜王 | 伊藤匠 七段 | 0 | ||
第1局 10/6(金) 10/7(土) | 〇 | 相掛かり 封じ手 51手 82手 17:02 | ● | 渋谷区 セルリアン タワー 能楽堂 | |
第2局 10/17(火) 10/18(水) | 〇 | 角換わり 封じ手 60手 107手 18:37 | ● | 京都市 仁和寺 | |
第3局 10/25(水) 10/26(木) | 〇 | 相掛かり 封じ手 44手 96手 18:21 | ● | 北九州市 旧安川邸 | |
第4局 11/10(金) 11/11(土) | 〇 | 角換わり 封じ手 82手 129手 17:32 | ● | 小樽市 銀鱗荘 | |
第5局 11/27(月) 11/28(火) | 香川県 ことひら温泉 琴参閣 | ||||
第6局 12/6(水) 12/7(木) | 秋田県 大仙市 旧本郷家住宅 | ||||
第7局 12/13(水) 12/14(木) | 甲府市 常磐 ホテル | ||||
先手 | 後手 |
タイトル獲得率100%の藤井竜王
藤井竜王(21)は、ここまで17回のタイトル戦全てを獲得し、獲得率100%です。18回目のタイトル戦である王座戦も、獲得まであと1勝です。
達成時期 | 達成年齢 | ||||||
1 | 2020/7 | 棋聖 | 渡辺 | 3-1 | 奪取 | 一冠 | 17歳11か月 |
2 | 2020/8 | 王位 | 木村 | 4-0 | 奪取 | 二冠 | 18歳1か月 |
3 | 2021/7 | 棋聖 | 渡辺 | 3-0 | 2連覇 | 二冠 | |
4 | 2021/8 | 王位 | 豊島 | 4-1 | 2連覇 | 二冠 | |
5 | 2021/9 | 叡王 | 豊島 | 3-2 | 奪取 | 三冠 | 19歳1か月 |
6 | 2021/11 | 竜王 | 豊島 | 4-0 | 奪取 | 四冠 | 19歳3か月 |
7 | 2022/2 | 王将 | 渡辺 | 4-0 | 奪取 | 五冠 | 19歳6か月 |
8 | 2022/5 | 叡王 | 出口 | 3-0 | 2連覇 | 五冠 | |
9 | 2022/7 | 棋聖 | 永瀬 | 3-1 | 3連覇 | 五冠 | |
10 | 2022/9 | 王位 | 豊島 | 4-1 | 3連覇 | 五冠 | |
11 | 2022/12 | 竜王 | 広瀬 | 4-2 | 2連覇 | 五冠 | |
12 | 2023/3 | 王将 | 羽生 | 4-2 | 2連覇 | 五冠 | |
13 | 2023/3 | 棋王 | 渡辺 | 3-1 | 奪取 | 六冠 | 20歳8か月 |
14 | 2023/5 | 叡王 | 菅井 | 3-1 | 3連覇 | 六冠 | |
15 | 2023/6 | 名人 | 渡辺 | 4-1 | 奪取 | 七冠 | 20歳10か月 |
16 | 2023/7 | 棋聖 | 大地 | 3-1 | 4連覇 | 七冠 | |
17 | 2023/8 | 王位 | 大地 | 4-1 | 4連覇 | 七冠 |
18 | 2023/10 | 王座 | 永瀬 | ? | 奪取? | 八冠? | 21歳2か月 |
羽生九段の、最初の17回のタイトル戦は、24歳の時、15回の獲得でした。このことからも、藤井竜王がいかに突出した棋士であるかが窺えます。90年弱のプロ将棋の歴史の中で、最強の棋士と言ってよいでしょう。
ちなみに400年の将棋の歴史で見ると、江戸時代末期に実力十三段と言われた天野宗歩がいました。現在21歳で、棋士のピークと言われる30歳まであと9年のノビシロがある藤井竜王、天野宗歩の領域に達するでしょうか。
いずれにしろ、藤井竜王が今回も防衛する可能性は高いので、関心は、挑戦者がどれだけ頑張るか、第5局・第6局まで藤井竜王を連れて行けるか、に移ります。
タイトル獲得の実力がある伊藤七段
さて、挑戦者の伊藤匠七段(20)について見てみましょう。
藤井聡太 | 伊藤匠 | 渡辺明 | 豊島将之 | 永瀬拓矢 | |
獲得 | 17期 | 0期 | 31期 | 6期 | 5期 |
誕生 | 2002 7.19 | 2002 10.10 | 1984 4.23 | 1990 4.30 | 1992 9.05 |
四段 | 14歳 | 17歳 | 15歳 | 16歳 | 17歳 |
五段 | 15歳 | 19歳 | 18歳 | 19歳 | 19歳 |
六段 | 15歳 | 20歳 | 20歳 | 20歳 | 20歳 |
七段 | 15歳 | 20歳 | 21歳 | 21歳 | 21歳 |
藤井竜王はあまりにも特別過ぎるので、以前ともに4強と言われた3棋士と比べてみましょう。伊藤七段は、プロ入り(四段昇段)に若干手間がかかりましたが、プロ入り後は順調に力をのばし、七段昇段では他の3棋士を追い越しています。
すなわち、伊藤七段もタイトルを10回20回獲得する実力がある棋士です。
渡辺九段は、藤井竜王が来る前にタイトルを取りまくって、31期獲得しました。
豊島九段と永瀬王座は、全盛期途中で藤井竜王が来てしまいました。もう少し早く生まれていたならば、獲得10期を超えていた可能性も十分あります。
しかしながら、伊藤七段は藤井竜王と同い年なので、全盛期がピッタリ重なっています。藤井竜王が来る前に取るとか、去った後に取るとかは、できません。
伊藤七段は藤井竜王に勝たない限り、タイトル獲得0期で終わってしまうかもしれない宿命を背負っています。だから諦める訳には行かないのです。藤井竜王に勝つ方法を考えるしかないのです。
対戦成績
藤井竜王 | 2-0 | 伊藤七段 |
先〇 | 22.11.29 棋王戦 角換わり腰掛け銀 | 後● |
後〇 | 22.9.11 NHK杯 相掛かり | 先● |
対戦成績は、藤井竜王の 2-0 です。伊藤七段は、序盤中盤はとても強く、藤井竜王と十分競り合える力をつけてきたと思います。しかし終盤力に大きな差があります。
トップ棋士を凌駕する終盤力を持つ藤井竜王に対して、伊藤七段は最近やっとトップ棋士に追いついてきたくらいです。
伊藤七段が勝つためには、中盤で大きくリードできる作戦が必要でしょう。羽生九段や広瀬八段が藤井竜王から2勝したような、藤井竜王が読めない形を作る作戦ができるかどうかにかかっているかと思います。
インタビューで伊藤七段は、「第6局の秋田は、師匠(宮田利男八段)の故郷なので」と話していました。是非、第6局が実現されるように頑張ってもらいたいものです。
そしてこの七番勝負が、この二人が今後20~30年繰り広げるであろう、頂上決戦の始まりとなることを予感します。
記録
決勝T 挑戦者決定三番勝負 2023 第1局:伊藤 第2局:伊藤 | ||||||||||
伊藤匠六段 | 永瀬拓矢王座 | |||||||||
伊藤匠六段 | 永瀬王座 | 羽生九段 | ||||||||
伊藤匠六段 | 三浦九段 | |||||||||
伊藤六段 | ||||||||||
伊藤 | ||||||||||
1-1 稲葉 陽八段 | 1-4 丸山忠久九段 | 1-5 広瀬章人八段 | 4-1 大石直嗣七段 | 5-1 伊藤 匠六段 | 6-1 出口若武六段 | 1-3 永瀬拓矢王座 | 2-1 豊島将之九段 | 2-2 佐藤康光九段 | 3-1 三浦弘行九段 | 1-2 羽生善治九段 |
竜王戦 七番勝負は、大抵は1組棋士が挑戦者となります。下位組から挑戦者となったのは、4組の渡辺明六段(当時)がこれまでの記録でした。伊藤七段は、新記録となる5組からの挑戦者となりました。
第1局 実施 | 保持者 | 挑戦者 | 合計年齢 | |
1 | 竜王戦 2023.10.6 | 藤井聡太 21歳2か月 | 伊藤匠 20歳11か月 | 42歳1か月 |
2 | 棋聖戦 1990.12.11 | 屋敷伸之 18歳10か月 | 森下卓 24歳5か月 | 43歳3か月 |
3 | 王位戦 1993.7.13 | 羽生善治 22歳9か月 | 郷田真隆 22歳3か月 | 45歳0か月 |
タイトル戦を戦う二人の合計年齢でも、歴代最年少となる若さです。