8/4(金)に行われた王座戦 挑戦者決定戦 藤井聡太七冠 豊島将之九段は、大激戦の末に藤井七冠が勝って、五番勝負の挑戦者に決まりました。
途中、豊島九段にも勝つチャンスが何度かあったようです。特に149手の局面に注目してみます。
豊島九段 若干リードの149手目
上手は149手目▲67桂打の場面、先手▲藤井七冠の勝率は43%で、後手△豊島九段が若干押し気味です。(勝率は再評価しています)
両玉接近戦の大変難解な局面で、しかも両者1分将棋です。
実戦では、豊島九段が150手△65玉と指し、先手勝率が98%となりました。
そして龍を寄せて攻防に利かせた藤井七冠が159手で勝ちました。
では、150手で、豊島九段がAI最善手を指していたら、どうなったでしょうか。
150手 幻の△54玉
AI最善手は、150手△54玉、先手勝率43%で、依然、豊島九段が押し気味です。
感想戦で、山崎八段からAI最善手を示された藤井七冠は、「こんな手があるんですか」と、気づいていなかったそうです。
同じく、豊島九段も、△54玉は次に▲34龍と王手で香を取られて後手負けと判断していたそうです。
それでは、この後のAI読み筋を追いかけてみましょう。
先手は▲34龍で香を取って王手をかけます。
後手は△44銀打で龍をブロックします。実戦では龍寄が先手勝ちの決定打になりましたので、この龍ブロックが大きいのではないかと思います。
先手は▲45角打王手で迫ります。
後手は更に△65玉と逃げます。
先手は入玉防止の▲77銀打
後手は△66歩打で入玉を目指します
先手は▲44桂で銀を補給
後手は△78金打で入玉を目指します
先手は▲54銀打王手で迫ります
後手は△64玉と一旦下がります
先手は▲63銀成で追撃
後手は△65玉と再び上がります
先手は▲56角で入玉阻止
しかし後手は△56同馬で、入玉の道が開けた模様
先手は▲35龍と追いかけますが
後手は△55歩打でブロック
先手は馬を払いますが
後手は△69角打で待望の王手
先手は▲48玉と逃げます
後手は△77金で76方向への入玉ルート確保
先手は▲25角打
(▲54角打は△同玉から先手玉寄り筋)
後手は△25同角成
先手は▲25同歩
後手は△76玉で入玉一歩前
先手は▲42とで金補給
後手は△67歩成で道を広げます
先手は▲38玉と早逃げ
後手は△42飛で、眠っていた飛車を活用
とても長いですね。まだまだ長く続きます。これを両者1分将棋で続けるのは、人間業ではないでしょう。
しかし、後手が勝ちやすい局面になっていますので、
(後手はちょっと間違えても勝率悪化しにくい)
(先手はちょっと間違えただけで急速に悪化)
人間が指したら、もっと早く後手が勝つかもしれません。
タラレバの話ですが、稀に現実に起きるのが、将棋の面白みです。