【竜王戦】ライバル大本命 伊藤匠六段

 竜王戦の挑戦者決定三番勝負に、伊藤匠六段が登場します。伊藤六段は藤井七冠と同学年、他のトップ棋士が藤井七冠より10歳以上年上なのに対して、初めての同世代ライバルです。

 伊藤六段のここまでの歴史を振り返ります。この表は学年相当の何歳年度で書いています。2002.10.10生まれの伊藤六段は今日(2023.7.28)現在20歳ですが、今年度21歳になるので、今年度は21歳年度です。(既に21歳になった藤井七冠も21歳年度)

年度藤井聡太伊藤匠渡辺明豊島将之永瀬拓矢
0歳2002
7.19
2002
10.10
1984
4.23
1990
4.30
1992
9.05
9歳奨励会
入会
10歳奨励会
入会
奨励会
入会
11歳奨励会
入会
12歳初段
二段
初段奨励会
入会
13歳三段初段初段二段
14歳プロ四段二段
三段
三段
15歳五段
六段
二段
三段
初段
二段
三段
16歳七段
C1
プロ四段
17歳プロ四段プロ四段
18歳八段プロ四段
19歳九段五段五段五段
20歳C1六段C1六段五段
21歳六段九段C1六段

 豊島九段・永瀬王座と比較しても、プロ入りで若干遅れましたが、プロ入り後は順調に昇段して追いついてきています。もし今回、竜王挑戦を決めると、七段に昇段し、追い越します。

 順位戦でC1に昇級したのは、渡辺九段と同じ、豊島九段・永瀬王座よりも早いのです。

 伊藤六段の将棋は、他の棋士からも高く評価され、
渡辺九段「いつタイトル戦に出てもおかしくない」
羽生九段 (ABEトナで)「強いから指名した」
と評されています。

 伊藤六段が高く評価されるのは、藤井七冠についで勝率が高いこともありますが、もう一つ「正統派の格調高い手を指す」からでしょう。勝負手のような手は、初見の相手に通用しても、その後研究されると、2度目は通用しません。しかし正統派の手は、研究されても、何度でも通用します。このことは、伊藤六段に「のびしろ」が沢山あることを示していると思います。

 ただ、このタイプは、奨励会では苦労するようです。プロ入りが遅れたのは、その為でしょうか(と言っても普通の棋士よりずっと早いのですが)。しかしプロでは勝てるので、順調に結果を出してきました。

竜王戦では

 初参戦の一昨年は、6組2回戦で敗れました。

 2度目の昨年は、6組で優勝しました。決勝Tでは、1回戦5組1位に勝ち、2回戦4組1位にも勝ちましたが、3回戦で1組5位の稲葉八段に敗れました。

 3度目の今年、5組で優勝しました。そして1組棋士を3人破って挑戦者決定三番勝負への進出を決めました。

決勝T 挑戦者決定三番勝負 2023
第1局:伊藤 第2局:伊藤
伊藤匠六段 永瀬拓矢王座
伊藤匠六段 永瀬王座 羽生九段
伊藤匠六段 三浦九段
伊藤六段
伊藤
1-1 稲葉 陽八段  1-4 丸山忠久九段  1-5 広瀬章人八段  4-1 大石直嗣七段  5-1 伊藤 匠六段  6-1 出口若武六段  1-3 永瀬拓矢王座  2-1 豊島将之九段  2-2 佐藤康光九段  3-1 三浦弘行九段  1-2 羽生善治九段 

永瀬王座とは

 挑戦者決定三番勝負で対戦する永瀬王座との対戦成績は、伊藤六段の 2-0 です。

 初手合いは、2021.9.28 王位戦 予選 3回戦で伊藤六段が勝ち、その後 王位リーグに進出した伊藤六段は、最終局で豊島九段に勝てば、紅組優勝というところまで迫りました。

 2度目は、2022.7.22 棋王戦 挑決 3回戦で伊藤六段が勝ち、その後、藤井七冠・天彦九段・羽生九段についでベスト4に入りました。

 過去2回、伊藤六段は永瀬王座に勝って、良い結果を残しています。

 そして3度目となる今回、再び永瀬王座に勝って、良い結果を出すでしょうか。

 尚、伊藤六段は永瀬王座の練習パートナーで、数多く練習将棋を指しているようです。そこは藤井七冠と同じ立場ですね。

 

同世代ライバル

 羽生九段には、康光九段・森内九段・藤井猛九段などの同世代ライバルがいて、鎬を削りあったことで将棋界が盛り上がりました。

 藤井七冠はあまりにも強すぎて、勝って当然となると、将棋人気がどうなるのか心配しています。

 伊藤六段は、藤井七冠と同い年です。今回の竜王戦の挑戦者になるかどうか分かりません。

 しかし今後20年、八大タイトル戦は、タイトル保持者が藤井七冠(八冠)、挑戦者はかなりの回数が伊藤六段となるかもしれないと思っています。

 二人が素晴らしい戦いを繰り広げてくれることを、期待しています。