王位戦 第2局は、藤井聡太王位が順調に形勢を良くして勝った会心譜でした。佐々木大地七段は、見せ場を作ることが、ほとんどできませんでした。
そうなったのは、序盤の駆け引きで、藤井王位がこの一局をコントロールできたからでしょう。
感想戦での発言含めて、振り返って見ましょう。
34手△94歩 で誘った藤井王位
図は23分考えた藤井王位が、34手△94歩と指したところです。この手の意味は、「先手さん、さあ何か仕掛けてきなさい」という誘いです。

残り 7:05 50% 残り 7:28
ここでAIが示したのは、35手▲66角打で、まず後手飛車を追い返してから、次に後手陣右側へと攻め込む手順でした。
しかし、34手の図を見ると先手56の銀が後手34の歩目指して突撃しやすい形です。
117分の大長考をした大地七段は、昼食休憩明けに35手▲45銀と進めます。

残り 7:05 47% 残り 5:31
これで藤井王位の誘いの第一段階が成功です。
36手△33桂 で更に誘った藤井王位
ここで66分考えた藤井王位は、更なる誘いをかけます。出てきた先手銀を更に引き込む手です。

残り 5:59 47% 残り 5:31
△33桂が銀取りになっているので、先手は銀を更に出るか、それとも戻るか、決めなければいけません。棋士心理として、一度出た銀を戻るのは、2手無駄にするようで、指しにくいのです。AIの指示は「戻れ」でしたが。
8分考えた大地七段は、更に銀を出ることに決めます。

残り 5:59 45% 残り 5:23
決め手となった 38手△47角打
ここで32分考えた藤井王位は、決め手となった38手△47角打を放ちます。先手銀が上がった後ろの隙をついて、馬を作る手です。

残り 5:27 45% 残り 5:23
この手を見た大地七段は、感想戦で「激痛ですね」と語ります。この手が見えていなかった(想定外だった)ようです。
とはいえ、まだ45%です。先手もまだ粘って逆転のチャンスは十分あるはずです。
しかし、この日の大地七段は、この手で心を折られてしまったようで、いつもの粘りが出せずに崩れて行きました。
そして、藤井王位は着実にリードを広げて勝ちました。
王位戦 第2局は、藤井王位が大地七段を精神的にコントロールした一局だったのでしょう。