【棋聖戦 第2局】終盤 二転 何が起きたか

 6/23(金)の棋聖戦 第2局は、終盤に二転する展開となりました。局後の感想戦含めて、何が起きたか見てみましょう。

 (勝率・最善手等は、再度見直しています)

大地七段の誤算

後手△藤井棋聖  72手  先手▲大地七段
残り 0:04     74%    残り 0:22

 上図は72手目、藤井棋聖は気迫の寄せを続けて、なんとか大地七段の緩手を引き出し、逆転を狙います。優勢の大地七段は、ここをかわし切れば勝利が見えてきます。

 次の73手目に▲48銀と打てば、後手の龍・角の追撃を振り切って、先手玉が左上に脱出し、安泰となるところでした。

後手△藤井棋聖  73手  先手▲大地七段
残り 0:04     41%    残り 0:20

 しかし大地七段の73手目は、▲48歩打。これで藤井棋聖が追撃可能となり、形勢逆転。

 藤井棋聖「▲48銀と打たれたら負けだと思いました」
 大地七段「▲48歩打で負けにしたかと思いました」

後手△藤井棋聖  74手  先手▲大地七段
残り 0:04     41%    残り 0:20

 74手目、藤井棋聖はすかさず△47金打。▲同歩は△58角成から3手詰みなので、▲68玉と左下に逃げるしかなく、上部への脱出が困難となりました。

 もし73手目が▲48銀なら、△47金打には▲同銀で△58角成も▲同銀と取れたのでした。

生き返った藤井棋聖

 中盤からずっと苦しかった藤井棋聖は、これで生き返ります。リードを確実にする為に厳しい追撃を続けます。

後手△藤井棋聖  99手  先手▲大地七段
残り 0:02     9%    残り 0:01

 そして99手目、▲52金ならまだ粘れた大地七段でしたが、▲25桂と打ってしまいました。これで形勢は一気に藤井棋聖の勝勢に。

 藤井棋聖「ここだけは勝ちになったかと」

後手△藤井棋聖  101手  先手▲大地七段
残り 0:02     9%    残り 0:01

 そして101手目、▲86玉として、なんとか上部へ脱出したい大地七段。

 藤井棋聖はここで△77銀打と王手をかければ、先手玉の脱出を許さず勝っていたでしょう。

見えなかった▲55角打

後手△藤井棋聖  102手  先手▲大地七段
残り 0:02     58%    残り 0:01

 しかし藤井棋聖の102手目は△78龍。これで再び形勢逆転して大地七段にチャンスが来ます。

後手△藤井棋聖  103手  先手▲大地七段
残り 0:02     58%    残り 0:01

 大地七段の103手目は▲55角打。この手以外なら全て後手勝勢です。藤井棋聖はこの▲55角打があることが見えずに、102手目△78龍と指してしまったようです。

 藤井棋聖「激痛でした」

後手△藤井棋聖  105手  先手▲大地七段
残り 0:01     58%    残り 0:01

 103手目▲55角打は王手なので、△同銀と取ると先手玉の上部脱出路が開き、▲78銀と龍を取られて下からの追撃もやりにくくなりました。

ショックを引きずる藤井棋聖

 しかしまだ先手有利になっただけです。藤井棋聖は、ここからしっかり粘れば、再逆転のチャンスもあったでしょう。それがいつもの藤井棋聖です。

 しかし、この日の藤井棋聖は、▲55角打が見えなかったショックを引きずったのか、いつもとは違いました。

後手△藤井棋聖  107手  先手▲大地七段
残り 0:01     58%    残り 0:01

 上図は107手目、藤井棋聖は次に△12玉と早逃げすれば、粘り続けられます。こういう攻守の切り替えや最善の粘りが、とてもうまいのが、いつもの藤井棋聖です。

後手△藤井棋聖  108手  先手▲大地七段
残り 0:01     96%    残り 0:01

 しかし藤井棋聖の108手は△24歩。これで決着がついてしまいました。

後手△藤井棋聖  109手  先手▲大地七段
残り 0:01     96%    残り 0:01

 大地七段は、すかさず▲31飛打、これで引導を渡しました。

 大地七段「こちらの詰めろがないので、勝ちかなと思いました」

 この109手▲31飛打からの寄せが見えなかったのも、いつもの藤井棋聖なら、考えられないことでしょう。

後手△藤井棋聖  111手  先手▲大地七段
残り 0:01     99%    残り 0:01

 そして111手目、大地七段の▲33香打を見て、藤井棋聖は投了を告げました。

大激戦後の中2日で疲れていた?

 藤井棋聖は6/20(火)に、王座戦 挑決T 2回戦を戦いました。負けていた将棋を、トラップ2発でひっくり返して逆転勝ち、大激戦でした。

 そして中2日で迎えたこの棋聖戦 第2局、疲れがあったように思います。

 これまでも週2局は数多くありましたが、大抵は中3日あり、乗り切ってきました。

 今回の、大激戦後の中2日は、本当にきつかったのでは。それが、いつもの藤井棋聖の力が出せなかった原因のように思います。

181920
王座
2R
212223
棋聖2
24
25262728
王座
準決勝
29
竜王
4昇
307/1
23
棋聖3
4567
王位1
8
王位1
910111213
王位2
14
王位2
15
161718
棋聖4
192021
順C2
22
232425
王位3
26
王位3
272829
30318/1
棋聖5?
23
順C2
45

 ところで今後はどうでしょう?

 棋聖戦は、7/18(火)の第4局の実施が確定。8/1(火)の第5局があるかどうかは、第4局が終わるまで分かりません。

 王座戦 挑決Tは、9月からの五番勝負の前に、1か月の準備期間を空ける為に、7月中に終わらせるのが慣例です。

 もし棋聖戦 第5局があり、藤井七冠が王座戦 挑決Tの決勝に進出すると、再び中2日、最悪 中1日が避けられない事態となります。

 大地七段の順位戦 C2 2回戦が7/21(金)に設定されたようなので、王座戦の決勝も同じ日かもしれません。その場合、棋聖戦 第4局の後に中2日となりますので、藤井七冠は王座戦がきつい、大地七段は順位戦がきつい、ということになります。