6/5(月)の棋聖戦 第1局、藤井棋聖は勝ちましたが、優勢な局面から互角に戻すなど、中終盤でかなり苦労しました。
一体何があったのか、感想戦での発言から分析してみましょう。尚、表記している先手勝率は、再度評価したものです。先手後手の残り時間も記載しています。
66手 △44桂打 61% ▲3:11 △2:13

藤井「65手▲37金で後手飛車が取れると思ったが、66手△44桂打は、なるほどと思った」
取られそうな飛車を守る為に後手が苦しい局面。AIの有力手にあった△44桂打を、藤井棋聖は気づかなかった様子。その手を指した大地七段、両棋士に読みの違いがあり、大地七段の方がAIに近かった模様。
85手 ▲52と 55% ▲0:24 △0:05

ここが一番問題の局面。AIは▲53角打で先手83%を示していました。大地七段もその手順に気づいていて、「海眺めるしかなかった」と諦め気分になっていた様子。
しかし、藤井棋聖の85手は▲52とで、先手勝率は55%に急落。
藤井「▲53角打からそんないい手順があるとは気づかなかった」
ここも両棋士に読みの違いがあり、大地七段の方がAIに近く、藤井棋聖は外していた模様。
90手 △86歩 79% ▲0:24 △0:02

結局は、これが大地七段の敗着となったでしょうか。AIは△43金なら54%と互角の形勢。しかし大地七段の90手は△86歩で一気に79%に。
大地「△86歩は後からでも入れるチャンスはあったので、金を上がる一手でしたね。」正解手順は見えていたが、残り時間が無い中、1分で指した手を悔やみました。
読みが合うか、合わないか
感想戦の発言を聞くと、両棋士の読みに違いがあり、大地七段の方がAIに近い感があります。それでも藤井棋聖が勝ったのは、時間の使い方含めて、勝負運びがうまかった、からかと思います。タイトル戦、16回目と初めての差でしょうか。
▶藤井棋聖と読みが合いそうな棋士
豊島九段・羽生九段・広瀬八段
▶藤井棋聖と読みが合わなそうな棋士
渡辺九段・天彦九段・大地七段
藤井棋聖の将棋をAIで評価しながら見ていて、気づくことがあります。豊島九段・羽生九段・広瀬八段とは、お互いAI最善手一致率が高い将棋になります。
しかし、渡辺九段・天彦九段とは、お互い最善手一致率が低い局面が長く続くということ。そして大地七段は、どうもこのグループらしいということ。
読みが合うと、自分の読み通りに相手が指してくれることが多いので、一度読んだ手順を何度も再確認しながら指し続けるので、最善手一致率が上がるのでしょう。
しかし、読みが合わないということは、自分が最善手と思う手を指せば、相手にとっては自然と読み外しになり、結果お互い読み外しの応酬となり、結果お互い読み直しの連続で最善手一致率が下がるように思います。
だからと言って、跳び抜けて強い藤井棋聖に勝つのは容易ではありません。しかし藤井棋聖が気づかない間にリードを握るチャンスはありそうです。