【名人戦 第2局】藤井竜王は何故▲1三角成と踏み込まなかったのか?

 名人戦 第2局は、2日目 夕食休憩後の終盤力の差で、藤井竜王が勝ちました。
 しかしその前、昼食休憩直後の51手目で、藤井竜王が▲1三角成をやめて▲26角と引いたことで、2日目午後は渡辺名人ペースで進みました。
 この辺りを分析してみます。

渡辺名人の50手 △34金

 藤井竜王は局後インタビューで「50手△34金で、▲13角成が成立するか分からなかった」と答えています。

後手△渡辺名人 実戦50手 先手▲藤井竜王

 ここで藤井竜王は、渡辺名人の50手はAI最善手の△34歩打と読んでいたのでしょう。
 その場合のAI読み筋は、下図71手のようになり、先手の攻めが分かり易く、成功しそうな展開です。この読みのもとに、藤井竜王は、49手35同角と前進したものと思われます。

後手△渡辺名人 変化71手 先手▲藤井竜王

 しかし実戦での渡辺名人の50手はAI次善手の△34金でした。
 50手△34金に対して51手▲13角成と踏み込んだとすると、AI読み筋は下図60手のようになります。

後手△渡辺名人 変化60手 先手▲藤井竜王

 これでも先手勝率52%なのですが、△34金以降の金の力で、先手の攻めが抑え込まれてしまいそうに見えてしまいます。これで自信が持てずに、58分の長考のもとに、51手目で▲1三角成をやめて▲26角と引いたと思われます。

 この辺りの駆け引きが、渡辺名人の、藤井竜王に最善手を指させないうまさ、なのかもしれません。

 この後、午後の間、渡辺名人は主導権を取りますが、夕食休憩の後、寄せが見えてくると、藤井竜王の抜群の終盤力にやられてしまいます。

 名人戦 7番勝負が、藤井竜王の強さだけで終わるのではなく、渡辺名人のうまさも発揮されることを祈っています。